Marion et Dimitri
(マリヨンとディミトリ)
La Grange 476
(ラ・グランジュ476)
ジュラでひっそりとワインを造り始めたカップル、農耕馬師のマリヨン ・ヴァルヴェルド (Marion Valverde)と醸造家のディミトリ・ヴェトア(Dimitri Vetois)。
彼らのドメーヌ、ラ・グランジュ476(La Grange 476)はシャトー・シャロンの隣村、メネトリュ・ル・ヴィニョーブルにある。ファーストヴィンテージは2020年だ。
穏やかで控えめな性格の二人は、僕たちが出会った2020年、自分たちのサイトもSNSもまったくやっていなかった。ジュラの他の生産者ともほとんど繋がりもなかったほどだ。そんな二人はどういった成り行きでここでワイン造り始めたのか。
ディミトリとワイン
ディミトリは、目が子どものようにいつも輝いていて、とても繊細な性格。お酒を飲むとお調子者が顔を出すキュートな人柄。彼はロワール地方のサンセール近く、ブルジュ町出身だ。
家族がワイン好きで業界の親戚も多く、幼い頃からワインと身近だった。なかでも彼の父親は、プリューレ・ロックのアンリーやサンソニエールのマルク・アンジェリとも知り合いで、昔からナチュラルワインを好んでいたそうだ。
そんな父親の勧めもあって、ディミトリはナチュラルワインに興味を持ち、若くからクロード・クルトワやアラン・カステックスなどのワインを飲んでいた。
学生時代は心理学を勉強したが、2009年ワーホリでニュージーランドの蔵元、リポン・ヴィンヤード(ビオディナミ農法)で働いたのがきっかけで、ワイン造りに興味を持ち始める。フランスに戻り、すぐにボーヌのワイン醸造学校で二年間勉強し、ぶどう栽培とワイン醸造の資格を得る。
卒業後、メネトゥ・サロン、シャトーメイヤンやサンセールなど地元の色々なアペラシオンのドメーヌで働く。
ディミトリはドメーヌ仕事の傍ら、幼馴染たちとシャトーメイヤンのガメイ畑を1Ha借りて、試しにワインを2016年から造り始めた。いきなり無添加で造ったために、結果はあまり上手くいかなかったらしい。2017年は霜で全滅してしまったため、フランス中のナチュラルワイン生産者やビオディナミックワインの生産者をめぐる旅に出た。その時オリヴィエ・クザン、マルク・アンジェリ、ジュリアン・ギヨ、エマニュエル・ジブロ、マス・リビアンらと出会う。
こうして少しづつ経験を積み重ねたディミトリは、ついに独立を決心。 自らピュアなワインを造ることにした。
看護師から農耕馬使いに
マリヨンは、華奢な体で600キロ以上もある愛馬ソフェリノを軽やかに操るスーパーウーマン。農耕馬の飼育と馬術の達人であるジャン・ルイ・カネルの元で農耕馬術を習い、国家資格を取得し、ラ・グランジュ476の畑のほとんどは彼女とソフェリノが耕している。
マリヨンはオーヴェルニュ、ピュイ・ドゥ・ドーム出身で、幼い頃から馬が好きだったそうだ。ワイン造りに関わる前は、緩和医療専門の看護師だった。クールさと優しさを併せ持ち、仕事柄日常的に人の生死を見てきた彼女は、とても強いメンタルの持ち主でもある。
ディミトリとは、マリヨンが大学生だった2014年に出会う。
当時ワインを全く知らなかった彼女に、ナチュラルワインを出会わせたのがディミトリだった。故郷オーヴェルニュでワインが造られていることを知らなかったマリヨン。そんな彼女にステファン・エルジエールのワインを飲ませたのが二人の、そしてマリヨンとワインの始まりだ。
この出会いによって、ワインと縁もゆかりもなかったマリヨンが医療の仕事を辞め、ディミトリのワイン造りの夢を共に追うことにした。
実は彼女には幼い頃からの夢があった。それは大好きな馬たちと一緒に働くことだった。
こうしてマリヨンは、ビオディナミ農法には欠かせない農耕馬術を会得することを決心。自分の夢と愛するディミトリの夢が重なったのだ。
なぜジュラに?
ワイン造りの道を共に歩むことになった二人は、どこでワイン造りをするかさまざまな地方へ足を運んだものの、彼らの条件に見合った場所を見つけることができなかった。三年の月日が経ったある日、シャトー・シャロンの近くにあるとても良い条件の畑を目にしすぐに訪問する。
それまでジュラに足を踏み入れたことがなかった二人。訪問の日、天気も悪く寂し気な雰囲気で、ジュラの第一印象は悪かったと二人は笑いながら話す。
しかし、畑は土壌も樹も素晴らしいものだった。アペラション・シャトー・シャロンの畑もあった。価格も良心的だったことから、二人は即決する。
こうして二人は、メネトリュ・ル・ヴィニョーブル村のグランジュ通り476番でワインを造ることにした。
二人のワイン哲学
当初は、ナチュラルワインを造るというよりも、「職人のワイン」「手造りのワイン」「表現力のあるピュアなワイン」を造りたいという考えを持っていた。
それに欠かせないのが「生命の尊重」「エネルギーを感じること」、そして「可能な限り手作業」であるという。
(※まだまだお伝えしたいことが山ほどあるので、情報は随時更新中です!)
ワイン
・レ ブシェット2020年 (Les Bouchettes 2020):
ㇾ・ブシェットは区画名。直訳だと「小さなお口」という意味。マリヨンとディミトリが住んでいる家とともに手に入れた 最初の畑の一つ。パワフルでありながら繊細な畑とのこと。
・アペラション:コート・デュ・ジュラ
・品種:シャルドネ100%、アルコール度数:13%
・栽培方法:マリヨンが農耕馬ソフェリノで耕している、オーガニック栽培とビオディナミ農法に移転して1年目
・畑の場所:メネトリュ・ル・ヴィニョーブル村、南向き、標高約300m
・土壌:岩盤はグレーマール・泥灰土で表面は粘土質土壌
・樹齢:2008年に植えられた樹
・面積:0.7Ha
・収穫方法:手摘み収穫、収穫時に畑で選果
・ダイレクト・プレス
・澱引き無しで、アルコール発酵をタンクで開始
・天然酵母でアルコール発酵、天然乳酸菌で乳酸発酵
・発酵中に樽入れ
・熟成:500Lのオーク樽で24カ月間
・清澄なし、濾過なし、添加物なし、亜硫酸なし
・ス ロッシュ2020年 (Sous Roches 2020):
ス・ロッシュは区画名。直訳だと「岩の下」又は「崖の下」という意味。
シャトー・シャロンのアペラション内の畑。2020年にマリヨンとディミトリがフェルマージュで借り始めるが、2023年に所有するセーユ川の畔にある畑。
・アペラション:酸化熟成ワインではないのでコート・デュ・ジュラ
・品種:サヴァニャン100%、アルコール度数:13%
・栽培方法:オーガニック栽培とビオディナミ農法に移転して1年目、少しづつマリヨンが馬で耕していく予定。
・畑の場所:メネトリュ・ル・ヴィニョーブル村、西向き、標高約250-300m、
・土壌:グレーマール・泥灰土に石灰の石がゴロゴロ
・樹齢:1990年に植えられた樹
・面積:0.2Ha
・収穫方法:手摘み収穫、収穫時に畑で選果
・ダイレクト・プレス
・澱引き無しで、アルコール発酵をタンクで開始
・天然酵母でアルコール発酵、天然乳酸菌で乳酸発酵
・発酵中に樽入れ
・熟成:500Lのオーク樽で24カ月間
・清澄なし、濾過なし、添加物なし、亜硫酸なし